【コラム】台北と高雄の違いー台北と高雄それぞれで生活して感じたことわかったこと

台北と高雄の違い
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2024年にとあるプロジェクトの関係で台北に数ヶ月赴任することになりました。これまで10年ほど台湾南部の都市高雄で生活してきましたので、台北での生活はいったいどんな感じなのだろうと色々想像しつつ台北へ向かいました。その時に感じた台北と高雄の違い、住んでみてわかったそれぞれのよさを記録しておきたいと思います。

台湾の政治経済文化の中心―台北

台北は台湾(中華民国)の首都で台湾の政治経済の中心地です。台湾新幹線で高雄から台北に向かい。台北に到着するとまずは人の多さに圧倒されます。台湾内政部の2023年の統計によると、台北市の人口は251万人、高雄市の人口は273万人となっていて、高雄の方が台北よりも人口は多いです。

ただ台北都市圏(台北市、新北市、基隆市)の人口は、台湾国内で最も多い704万人と高雄市の3倍弱もの人口が集中している人口過密地帯。人の数が桁違いに多いのも頷けます。

台北には政治の中心である総督府や立法院、国の機関、台湾を代表する企業の本社も台北や新北に集中しています。文化施設も豊富で中国の財宝を収めた故宮博物院や国立台湾博物館に歴史博物館、

巨大な蒋介石の像がある国立中正紀念堂、高さが500メートルを超える超高層ビル台北101などがありますし北投温泉や九份、陽明山、ウーライなどの観光地も台北近郊です。高雄にも文化的な施設はありますが、やはり台北とは比較になりません。

台北駅だけでなく、台北MRTはとにかく人で溢れています。通勤時間帯になると日本の通勤電車のような混雑です。しかも人の歩く速度がとにかく速い!よく東京の人は歩くのが速いと言われますが、それと同じで、高雄で普段歩くペースでは到底台北人の足には追いつけません。

私が住むことになるマンションまで案内してくれた台湾人の同僚も、とにかく歩くのが速いので、思わず「もう少しゆっくり歩いてもらえませんか?」と言ったら「あれ?君はもともとは東京人でしょう」と笑われてしまいました。

台北の住宅事情

台北生活の拠点になったのが台北市内にあるマンションです。住まいは総督府からほど近い場所にあり、交通もとても便利な場所にあります。高雄のマンションよりは狭めでしたが、生活に必要なものは一通り揃っています。セキュリティも高雄のマンションと同じで一階にコンシェルジュがあり、とても安心できます。

違うのは家賃です。高雄では25000元でかなり良いマンションに住めますし、3万元以上の家賃を出せばコンシェルジュのいるマンションに住めます。ところが台北では3万元の大樓というのはなかなかないそうで、4万元は軽く超えると言われてしまいました。

かくいう私も今回住むことになったマンションは普通のマンションですが、この値段では高雄なら超高級大樓に住めそうな金額です。

でも住環境は素晴らしく、とても静かな場所で、周辺は日本統治時代の旧家がちらほら残っている、文化的な地域。こんな環境なら台北暮らしもいいかもしれない、と感じる環境でした。

台北と高雄のゴミ事情:垃圾車(ゴミ収集車)の音楽が違う

高雄で夕方になると聞こえてくるのが「乙女の祈り」の音楽。これはゴミ収集車が各収集地点に到着したときに流す音楽です。「乙女の祈り」が聞こえてくると、たくさんの人がゴミ収集車のところへゴミを持っていきゴミ袋を収集車に投げ込みます。観光で来られる方であれば、乙女の祈りが聞こえてくると、あー台湾に来たんだ、という気持ちになると思います。

ところが、台北に住んでみて、夜になって聞こえてきたのは「エリーゼのために」。そうなんです、台北と高雄ではゴミ収集車の音楽が違います。ちなみに高雄のおとなり、屏東でもゴミ収集車の音楽は乙女の祈りですし、新北市内のゴミ収集車の音楽も乙女の祈りです。

台北は指定有料ゴミ袋でしかゴミが捨てられない

ゴミ袋事情も違います。高雄では、小北百貨や全聯福利中心(PXマート)、家樂福(カルフール)などで販売されているロール巻きになったゴミ袋で捨てられるのですが、台北では指定されたゴミ袋を購入しないとゴミが捨てられません。

台北の指定ゴミ袋は全聯福利中心(PXマート)、家樂福(カルフール)などで購入できます。台北の家樂福(カルフール)で買い物袋を購入すると、ホログラムのついたビニールの買い物袋を渡されます。これが実は台北市の指定ゴミ袋になっています。

#台北の専用ゴミ袋についての情報はこちらからどうぞ。

台湾には日本のようなゴミステーションという施設がないので、ゴミ収集車のところまでゴミを持って行き、あとはゴミを投げ込みます。ゴミ収集車は夕方から夜にかけて何度かやってくるので、都合の良い時間に捨てられますし、一般ゴミは週に5回、リサイクル(回收)は週に2回捨てられます。台湾のごみ収集は、日本とは違って、ほとんどのものが処分できます。

例えばノートパソコンや液晶テレビ、バッテリーやタイヤも処分できてしまいます。大型の粗大ゴミ(ベッドや家具、大型家電など)は清掃センターに電話を入れると、案内された日に回収に来てくれます。高雄の場合は無料です。

24時間いつでも捨てられるゴミステーションのあるマンションを選ぶ

マンションによっては日本のゴミステーションのような区画があって、そこに24時間365日ゴミをいつでも処分できるようになっているところもあります。高雄や台北のマンションにもそのような区画があるので、いつでもゴミが処分できるところに住みたい、と思ったらゴミステーションのあるマンションを選ぶのが良いでしょう。管理人やコンシェルジュのいるマンションには基本的にゴミがいつでも捨てられるゴミステーションがあります。

台北の物価事情

台北暮らしでまず探したのが食料品などの調達をどこでするかということです。台北で食料品を購入する場合、全聯福利中心(PXマート)や家樂福(カルフール)といったスーパーで買うのが一般的のようで、買い物のスタイルは日本と同じかもしれません。

高雄では伝統市場と呼ばれる市内の市場で野菜や果物を買っていますので、スーパーで食料品を全て買い揃えないといけないというのに、若干の戸惑いを感じました。その後台北のマンション近くにも伝統市場があることがわかり、週末は市場での買い物を楽しめました。

台北と高雄の違いに物価を上げる人が多いです。実際に台北と高雄ではどれくらい物価が違うのかというと、スーパーの価格は高雄も台北もほぼ同なのですが、市場で野菜や果物を購入する場合でも台北の方が10―20%くらい高いと感じました。

果物の値段が高い

果物はびっくりするくらい価格が違います。例えばグアバですが、台北で売られているグアバは高雄の1.5倍から2倍以上するものもあります。バナナも高雄よりも値段が高く、スーパーとそれほど価格差がありません。台北にいる間は、果物はあまり食べられないね、と妻と話したのを思い出します。

外食にかかる費用は台北の方が圧倒的に多いです。日本人観光客であれば台湾に来たら必ず食べたいと思うのが小籠包(ショーロンポー)かもしれませんね。高雄だと大体100元も出せばお釣りが来るのですが、台北は200元を超えるお店もあって、台北の物価の高さを感じました。高雄でもディンタイフォン(鼎泰豐)で食べると台北と同じですけどね。

よく南部の台湾人の同僚が「台北で暮らしたら、毎日泡麵(カップラーメン)を食べないとやっていけないよ」と冗談で言っていたのを思い出しましたが、実際に生活してみると冗談じゃないくらい台北の物価は高いです。

物価が高い分、台北は高雄よりも高収入の仕事に就けるチャンスがあります。収入が高い分、物価もそれに合わせて高くなっているということなのでしょう。

とにかく便利な台北の公共交通

台北の物価の高さがあまりにも衝撃的だったので、その思い出がとにかく鮮明に残っているのですが、台北にもいいところはたくさんあります。台北や新北は交通網がとにかく発達しています。MRT(地下鉄)やバスはとても便利で、台北で生活している間は、バイクや車に乗る必要性は全く感じませんでした。

台北のバス路線網は非常に複雑ですが、路線を覚えてしまえばこれほど便利な乗り物はないと感じられるようになります。台北市内の主要道路はバス専用のレーンがあって、一般の車両は走行できません。そのため一般道路が渋滞していても、バスはスイスイと走行できるようになっています。

しかもバスの本数が多く、目的地に向かうバスがラッシュ時には数分おきにやってくるほどの過密さ。福岡のバスも過密なことで知られていますが、台北のバスはその上を行く過密さです。台北の同僚たちも台北に住んだらバイクは普段ほとんど乗らなくなったと言っていましたが、本当にその通りだと思います。

空港へのアクセスは高雄の方が便利ですが、日本へ向かうフライトなら台北松山空港が利用できるので、利便性は高雄と変わりません。

水質の違い

台湾は小さい島国ですが、南部と北部では水質が異なります。私の住んでいる高雄は超硬質で、水道の水をそのまま沸騰させるとミネラルが固まった白いものがびっしりとついてしまうほど。それもそのはずで、台灣自來水公司(台湾水道事業所)のデータによると、高雄の水は硬度が平均で246mg/L、最大で300 mg/Lだそうです。

高雄は超硬水

WHOのガイドラインによると、軟水は0―60mg/L、中程度の軟水が60―120 mg/L、硬水が120―180 mg/L、超硬水が180 mg/L以上です。ミネラルウォーターで有名なエビアンも300 mg/Lなので、この基準からすると、高雄の水はエビアンと同じ超硬水ということになります。私が住んでいる高雄の自宅には硬度を下げるRO浄水器を設置していますが、これがないと水道の水が飲めません。

台北は日本と同じ軟水

台北の水は高雄とは全く違い日本と同じ軟水です。臺北自來水事業處(台北水道事業所)のデータによると、台北の水道水は平均33.9 mg/Lなので、日本の水道水とほぼ同じ軟水です。台北の同僚に話を聞いたのですが、台北ではRO逆浸透圧浄水器を使わなくても、普通の浄水器もしくは水道水をそのまま煮沸するだけで飲めるということでした。

私も家にあった湯沸かしポットでお湯を沸かしてみたのですが、高雄のような白い結晶は全く付きませんでした。妻も台北に住んでから軟水のせいか髪質が良くなったと喜んでいました。水道にも大きな違いがあるんですね。

気候の違い

台北も高雄も同じ台湾だから年中暑そう、そう思うかもしれませんが、実はそうではありません。台北は亜熱帯気候、高雄は熱帯気候です。地形も違います。台北は周りが山に囲まれた盆地、高雄は海に面した港町なので、夏の暑さは台北の方が暑いとよく言われます。その理由は高雄は海からの風がくるので、日陰では心地よく感じるためなのだそうです。まあ私から言わせてもらうと夏天は高雄も台北も暑いですが。

冬の気候は高雄と台北ではかなりの差があります。高雄は冬というよりは日本の秋のような気温ですし、晴れ間が出る日が多いです。台北は冬(冬天)の時期は雨が降り続くので、湿度が非常に高く、ジメジメした寒さが特徴です。通勤の時はほぼ毎日傘を持ち歩いていました。そのためクローゼットなどにカバンや衣類を収納しておくと、カビが一面に生えてしまいます。台北では冬の間は除湿機をつけないと大変です。

言語の違いは?

高雄で生活していると、街のあちこちで台湾語が聞こえてきます。市場やスーパーでも台湾語を話す人が多いです。台湾語というのは閩南語と呼ばれる言葉で、中国語と同じ声調言語ですが、発音の仕方や成長が中国語とは大きく違います。

台北でも台湾語を話す人はいるのですが、街中や市場でも聞こえてくるのは基本的に中国語。高雄だと街のあちこちで台湾語が聞こえてきます。私もティアボー:聽不懂(わかりません)とか、パイセー:歹勢(すいません)とか、ワーセージップンラン(私は日本人です)といった台湾語を使うことがあります。

台北滞在中は台湾語を使う機会はほとんどなく、自己紹介をするときに台湾語で挨拶をしたらみなさんとても驚いていました。若い人の中には台湾語が全く話せないという人もいるからです。私は台湾語が話せないので、中国語のみで生活できる台北はストレスが少ないと感じました。

あらゆるものが集まる台北

台北には台湾だけでなく世界中からあらゆるものが集まっています。日本の企業も台湾に支社や支店を設置しますし、ここは日本かと錯覚してしまうほど、日本のものがあちこちにあります。

例えば牛丼のすき家や松屋、吉野家はもちろん、イタリアンが食べられるサイゼリア、和食の大戸屋ややよい軒、コメダ珈琲にスシローやくら寿司、がってん寿司やはま寿司もありますし、ドンキホーテや三越、他にもダイソーやセリア、カルディもあります。ドラッグストアだとマツモトキヨシやサツドラも台北に進出しています。他にも日系ホテルが多く進出しているのも台北です。

日本の駐在員は台北に住んでいる人が多いので、これだけ日本のものがあれば不自由は感じないと思います。

高雄はどうなの?

高雄は台北に少し遅れて海外のものがやってくるという印象が強いです。先ほど台北にある日本の店舗をいくつか挙げましたが、まだ高雄に進出していない店舗もあります。それでも、10年前と比較すると最近は高雄にも日本企業がだいぶ進出してきたのでとても便利になりました。

台北はさすが大都会という感じで、ありとあらゆるものがありますし、生活するには便利な場所です。Apple Storeがあるのも台北のみ。初めて台湾で生活するという外国人には台北で生活をスタートするのがいいかもしれません。

タクシーの運転手と話していて面白いことを言っていました。私が高雄から仕事で台北に来ているという話をしたところ、「高雄はいいところですね。もちろん台北もいい場所です。私は台北生まれの台北育ちですが、高雄にも台北にもいいところがありますよ。」という返事が返ってきました。タクシー運転手さんのおっしゃる通り、環境は違えどそれぞれに良さがあって、どちらも住みやすい場所だと思います。

こんなことも言っていました。「高雄の道は広くていいよな。みてごらん、台北の道は高雄よりも狭いでしょ、だからいつも渋滞するんだよ。街並みも高雄は綺麗だもんな。それに台北の冬は毎日雨続きでうんざりすることがあるよ。高雄はそんなに雨は降らないだろ、本当羨ましいよ。」

最後に

短い間でしたが今回台北で生活してみて、高雄との違いをいろいろ知る機会になりました。これまで台湾南部でしか生活をしたことがなかったので、実際に生活してみると、これまで気づかなかったことに気づきます。高雄も台北もそれぞれ良さがあり、それぞれ不満に感じてしまうこともあるのですが、それはどこの国でも同じことが言えるのではないかと思います。どちらに住む方がいいの?と聞かれたら、仕事で住むなら台北がいいと思うけど、長く台湾で生活することを考えているなら高雄がいいかもねと言うと思います。

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